10月も終わりますね。2021年、時の経過か早すぎて、人生もあっという間に終わっていくのだなと夕焼け空を眺めながら思ったりするわけです。
Salesforceの管理者の皆様、MFA対応やフロー移行など考えることが多くお疲れかと思いますので、今日はちょっと違う話題を。
私のバイブルをご紹介します。
『具体と抽象 世界が変わって見える知性のしくみ』
著者:細谷功
2014/12/1 dZERO発行
◆ Amazon >具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ 単行本帯に引用されていた「序章」の部分をこちらにも引用します。
「具体=わかりやすい」「抽象=わかりにくい」というのが一般的に認知されているこれらの概念の印象です。つまり、抽象というのは一般にわかりにくい、実践的でないといった否定的な意味で用いられているのではないかと思います。
これほど役に立ち、人間の思考の基本中の基本であり、人間を人間たらしめ、動物と決定的に異なる存在としている概念なのに、理解されないどころか否定的な文脈でしか用いられていないのは非常に残念なことです。
本書の目的は、この「抽象」という言葉に対して正当な評価を与え、「市民権を取り戻す」ことです。
(p.14)
この文章を読んでわくわくしたあなた、すぐに読みましょう。Kidle版もありますので、是非。アフィリエイトは行っていませんので、私には一銭も入りませんが、素晴らしい内容なので!
あなたと私、それぞれの世界があるから
仕事の場で同僚や上司、お客様に何かを説明しなくてはいけないとき、「わかりやすさ」はもちろん意識しますし、
常にコミュニケーションでは 「相手にこの言い方で伝わるか?」と自分の言葉を頭の中で反芻します。かの哲学者ウィトゲンシュタインは「私の言語の限界は、私の世界の限界を意味する」と表しましたが、言葉を扱うときはいつでも慎重に、相手と自分との世界について想像を巡らせたり、相手に意図の確認をして、コミュニケーションを進めます。お互いが持っている情報、言葉の定義によって発言の捉え方が異なりますし、理解を一致させないまま相手を置き去りにするようなことは、ことに一緒に物事を進めていく相手であれば、そのような事態は避けるべきですよね。
学生時代、ディスカッションにしろ論文を書くにしろ、重要な単語の定義をまずは明確にしなさいと教わりましたが、そこにずれが生じていると、意見の理解も違うものになってしまいます。
同じ言語で話をしていても、相手と私が違う人間であることを意識して、互いに理解しあおうという姿勢から築き上げていくものがコミュニケーションだと思います。
抽象的に理解することの意義
前置きがながくなりましたが、本書では、視点が異なる限り(具体的な事象から見るか、抽象的に把握するかなど)埋められないギャップや、抽象的に物事を理解することの重要さなどについて、図解や4コマ漫画を用いながら説明されています。
目次を引用しますね。
序 章 抽象化なくして生きられない
第1章 数と言葉……人間の頭はどこがすごいのか
第2章 デフォルメ……すぐれたもの前や似顔絵とは
第3章 精神世界と部類世界……言葉には二ずつ意味がある
第4章 法則とパターン認識……一を聞いて十を知る
第5章 関係性と構造……図解の目的は何か
第6章 往復運動……たとえ話の成否は何で決まるか
第7章 相対的……「おにぎり」は具体か抽象か
第8章 本質……議論がかみあわないのはなぜか
第9章 自由度……「原作」を読むか「映画」で見るか
第10章 価値観……「上流」と「下流」は世界が違う
第11章 量と質……「分厚い資料」か「一枚の図」か
第12章 二者択一と二項対立……そんなことを言ってるんじゃない?
第13章 ベクトル……哲学、理念、コンセプトの役割とは
第14章 アナロジー……「パクリ」と「アイデア」の違い
第15章 階層……かいつまんで話せるのはなぜか
第16章 バイアス……「本末転倒」が起こるメカニズム
第17章 理想と現実……実行に必要なのは何か
第18章 マジックミラー……「下」から「上」は見えない
第19章 一方通行……一度手にしたら放せない
第20章 共通と相違……抽象化を妨げるものは何か
終 章 抽象化だけでは生きにくい
ついでに序章で抽象化の特徴について書かれているところも引用します。
具体は一つ一つの個別事象に対応したもので、抽象はそれらを共通の特徴で一つにまとめて一般化したものです。つまり複数(N)の具体に対して一つの抽象が対応する、「N:1」という対応関係になります。
したがって、具体的な表現は、解釈の自由度が低い、つまり人による解釈の違いがほとんどないのですが、反対に抽象的な表現は、解釈の自由度が高く、人よって解釈が大きく異なる場合があります。解釈の自由度が高いといことは、応用が利くこととなり、これが抽象の最大の特徴ということになります。
学者や理論家の仕事は通常、複数の事象を一般化・抽象化することで理論化・法則化して、だれにでも役に立つ汎用的なものにすることです。一方で、理論化されたものはそのままでは実行するのが難しいので、それを具体化する必要があります。そのため実務家は、具体レベルでの実行を重視します。
(p.16)
本質を理解する=抽象的な表現を獲得する?
これは私が考えた言葉なので、本書の論旨にあっているか不安なため「?」がついてます。
私が思い出したのは、Salesforceの勉強をし始めたばかりの頃、プロファイルとロールの違いがわからなかったとき、先輩との会話で「プロファイルはできること、ロールは見えるものを決めるのか!」という表現が頭に降ってきまして、その後は自信をもってアクセスコントロールの勉強に挑めたことです。厳密に正確に言うとロールでもレコードに対してできることを決められたりするのですが、大掴みの理解はこれであっているかと思います。何が言いたいかというと、応用が利く、本質の理解は、抽象的だということです。何にでも例外はありますが、基本的な考え方や仕組みについて大筋を理解するとき、表現はシンプルに短く、抽象的になるものです。
Salesforceのことについてわかりやすい説明を書こうとするとき、このような表現が自然に降りてきたときは仲間からも高評価をいただける記事が作れるのですが、何も降りてこないときは本質がみえていないときなので、見えるまで粘ります。でも残念ながら出ないまま時間切れのときもあります。
視点の違いを意識しながら対話を試みる
最初の話に戻りまして、世の中には「具体的に言ってくれないとわからない派」と「重要なところだけ教えて派」がいると思うのですが、どちらに重きを置いて所属しているかを意識して、(可能であれば)相手の理解の仕方にあわせた話し方をしてみると、理解の相違から止まっていたコミュニケーションがスムーズに進行するかもしれません。
もちろん、人間対人間なので、すんなりセオリー通りはいかないでしょう。それでも、どの視点に立って、何を重視して、どのような粒度の話をしているのか、そこを考えることで冷静に議論できるかもしれません。
最後に
名著なのですでにご存じの方も多いと思いますが、本当に大好きな本なので紹介させていただきました。ちなみに著者の細谷先生の他の著書も面白いのでおすすめです。『「無理」の構造』や「自己矛盾劇場」も是非!
皆さまもおすすめの本がありましたら教えてください。
紹介した本
※Amazonにリンク張ってます。
『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ 』(細谷功 2014/12/1 dZERO発行)『「無理」の構造 ―この世の理不尽さを可視化する 』(細谷功 2016/2/26 dZERO発行)『自己矛盾劇場 ―「知ってる・見えてる・正しいつもり」を考察する』(細谷功 2018/12/24 dZERO発行)関連記事
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